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世界最古の森とその住人たち

恐竜の絶滅も、哺乳類の台頭も、人類の歩みも、 すべてを静かに見守って来た森。
それが、ケアンズ地区に今も残る熱帯雨林。
1億2000万年の時の重みが目の前に広がる奇跡を感じよう。
そして、そこに息づく生命の深さに触れてみたい。

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地球が誕生したと言われるのは46億年前。太古の地球は、天体の衝突や火山の噴火、地球全体の凍結、海水の蒸発、気温や大気中の酸素濃度が急激に変わるなど、想像を絶する劇的変化に繰り返しみまわれました。
そんな過酷な状況の中でも、35億年前以降には単細胞生物の藍藻が、そして3億5000万年~4億年前には昆虫類や両生類、2億年前~6500万年前までは恐竜やほ乳類など、地球上には環境に適応した数々の命が誕生します。

オーストラリアで有袋類が生き残った理由

2億5000万年前ごろまで、現在のオ―ストラリア、南アメリカ、南極は、パンゲアと呼ばれる1つの巨大大陸でした。
3つの大陸が全て地続きだったので動物も植物も自由に行き来しており、現在はオーストラリア周辺やアメリカ大陸でしか見ることのできない有袋類は、アジアから分布を広げ、南アメリカに至って同地で繁栄していたと言います。

ところが500万~200万年前に南アメリカ大陸が北アメリカ大陸とつながり、有袋類は、南進してきた有胎盤類と競合した末、オポッサムなどを除いて絶滅の道をたどることになりました。

ジュラ紀(1億8000万年前ごろ)になると、パンゲア大陸は北のローラシア大陸と、南のゴンドワナ大陸に徐々に分裂。更に6500万年ほど前に、オーストラリア大陸はゴンドワナ大陸から独立していき、その後どの大陸とも接触が起きなかったために、植物や動物が隔離された状態で保存されることになったのです。

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この間、数多くの動物が進化を遂げましたが、オーストラリアには偶然にも有袋類を脅かす動物がいませんでした。アボリジニがつい200年前までこの大陸の自然を理想的に護っており、人間による動物の絶滅が他の大陸に比べ驚異的に少なかった事も理由と言われています。加えて、オーストラリア大陸の地盤は安定したプレートの上に成り立っていて他の大陸ほど移動しなかったために、気候を含めて自然環境の急激な変化にみまわれることもありませんでした。

有袋類動物が独自の進化を遂げなかった為の、こうした条件が揃ったことは奇跡的と言えるかもしれません。

ケアンズ周辺の森と動物

かつてオーストラリア全土を覆っていた熱帯雨林も、現在では大陸の面積の0.26%に留まるだけとなってしまいました。しかし、ここケアンズ周辺には、1億2000万年前にも遡るという森が遥かな時を経た今も現存しています。
そこには、2800種を超える植物が育ち、(うち380種は大変珍しいものや絶滅危惧種)、700種は世界の他のどの地域でも見られない種と言われます。

  ケアンズの豊かな自然環境の中では、奇跡的に生き延びた有袋類や、単孔類(現存するのはカモノハシとハリモグラのみ)が生息しています。世界には様々な動物たちがいますが、特に単孔類は特別な存在であることをご存知でしょうか。それは、進化の歴史に関わっています。

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  ほ乳類の祖先は、三畳紀(2億5100万年前~2億年前頃)に出現した獣弓類という爬虫類だと言われます。ここから単孔類も派生し、ジュラ紀になると、草食性、肉食性を含めてたくさんのほ乳類動物が登場しました。 (恐竜が繁栄した時代のほ乳類は、恐竜の活動範囲の及ばない生活をしたため夜行性が多く、現在も鳥類に比べると視覚が全般的に劣っているそうです。)

有袋類と子どもを胎盤で育てる有胎盤類に関しては、白亜紀末期(6550万年前頃)に、別の進化をたどって登場。オーストラリアを除く他の地では有胎盤類が優勢で、有袋類は衰退していってしまったのは前に述べた通りです。
こうして繁栄していたほ乳類ですが、巨大隕石が現メキシコに落下、気温が急激に下がった6500万年ほど前、そのほとんどが絶滅の道へ。

  ところが、単孔類は生き延びました。そう、彼等は、ほ乳類の中で地上で最も長いサバイバーなのです!
ヒトが地上に姿を表わしたのは700万~500万年前だと思うと、カモノハシやハリモグラはまさに「生きている化石」。生態の不思議だけでなく、こんな背景からも特別な動物であることがわかるでしょう。


カモノハシもハリモグラも、現在ではオーストラリアとニューギニアでしか見ることができません。カモノハシにいたっては、オーストラリアの中でも、一部地域にしかいないほど貴重です。(同国の誇る動物として、両者ともシドニー五輪のマスコットや5セントコイン、20セントコインに抜擢されています)

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恐竜が絶滅した後の新生代になると、有胎盤ほ乳類は爆発的に居住地を広げ、多種多様な種が現れて、現在ではおよそ4500種が知られています。一方、現存する有袋類は270種ほど。

有袋類の生き残りであり、進化を繰り返して現在も生息するカンガルーやワラビー、ポッサムなどをこの地で見られるのは、とても貴重な体験と言えるでしょう。

ケアンズ周辺で見られる自然は、動物も雨林も非常に古い年代のものであり、単に自然が豊富という以上の意味合いを伴います。
気が遠くなるような地球の生の営みに思いを馳せるとき、まるでタイムカプセルのように保存された自然や動物たちが息づいていることの奇跡を感ぜずにいられません。この環境を守るために、私たち1人1人に何ができるか、今問われているのではないでしょうか?

創刊20周年、ケアンズの情報満載のフリーペーパーリビングインケアンズ 09.7-8月号掲載。(同誌配布先はこちら


cayco

ひつじ年、おひつじ座。1993年よりケアンズ在住。ケアンズの地元情報誌を1995年に立ち上げ、16年間編集長を勤める。現在は、ケアンズ市内で「オーストラリアのいいモノ」を集めたギフトショップパウチを運営。著書に「家族でケアンズ」(講談社)あり。休日は自然の中でのんびりしてます。http://ameblo.jp/cayco